「バイ・ディス・リヴァー」ブライアン・イーノ/[By This River]Brian Eno
本名はBrian Peter George St. Jean le Baptiste de la Salle Eno
傑物の至言-5 Brian Eno (ブライアン・イーノ) | 傑物たちの至言
で紹介した傑物の一曲。
ブライアン・イーノBrian Enoと言えばアンビエント・ミュージックの巨匠くらいの称号で語られてしまうが、とてつもない存在。
・楽器が弾けない(自称)
・音楽の究極の在り方を常に追求している
・音、音色、音響、リズムなど音楽に関連するもの総てに意識的
・ゴリゴリの前衛、現代音楽とも一線を画し、大御所として作品を発表し続けながらその真の先進性、破壊性、革命性は理解されにくい
・世界中のアーティストからプロデュースを依頼される(U2、トーキング・ヘッズ、コールド・プレイ・・書き切れず)
と、こう書いたところで表面をざらっとなぞっただけ。
我々が頭上を見上げ「雲ひとつない青空、気持ちいいなぁ」と見ている時に、
先のブラックホールのことを見ているんじゃないか、と思うくらい次元が違う。
至言でも書いたように作品はすべて大傑作なので伏して聴くしかないが、中でも
『Discreet Music(ディスクリート・ミュージック)』は「~の為」と必ず行為の利得を換算しないと気が済まない連中には瞑想=メディテーションにどうぞ、とでも言っておこう。
瞑想=メディテーション自体、否定する気はないが「メディテーションの為の音楽」みたいな括りで音楽を矮小化することを否定するだけだ。
『Discreet Music(ディスクリート・ミュージック)』は自分が在ることの境界線ギリギリまで連れていかれる音楽。
基本的にネタバレ的なレビューをしない主義なので、関心があれば是非、とだけ。
そもそも自分の生活に邪魔にならない、というか生活環境を構成するものとしての音楽を模索した結果のコンセプトであり、何枚ものアルバムとして成果を発表している。
アンビエント・ミュージックを追求しながら一方、時にはポップなアルバムで本人は「自分の声は嫌い」と言いながら歌ってみたりする。
これがまた長編作家がたまに書く短編の如く魅力満載の楽曲の数々。
Brian Eno(ブライアン・イーノ)のヴォーカル曲は素材そのまま、調味料不使用だ。
中でも『ビフォア・アンド・アフター・サイエンス(Before and After Science)』に収録されている「バイ・ディス・リヴァー(By This River)」この曲のメロディに惹かれ続け、自分の大事な曲フォルダには必ず選曲してきた。聴いた回数数知れず。
『川のほとりで」という原題。
牧歌的ともいえる穏やかなトーンで静かに歌われる歌詞の冒頭は、
Here we are stuck by this river
You and I underneath a sky
That's ever falling down down down
Ever falling down
「わたし達はこの川の傍で立ち往生、
あなたと私は堕ちて堕ちて堕ちる、いつまでも堕ち続ける空の下で」
短いフレーズが読み上げるように歌われる3分ほどの小品の態で終えるのは、これ以上続ける必要がないほどの完成曲だから。
2001年度カンヌ国際映画祭パルムドール最優秀作品賞受賞映画『息子の部屋』(ナンニ・モレッティ監督)で使用されていて驚いた。
アルバムに収録されているだけの20年以上前の曲の魅力をフランス人が知っていた。
この短い曲を何度も何度も聴く。
悲観、絶望感を歌う曲だけれども、わたしには曲調そのままに優しい。
1948/5/15- (現在71歳)
作曲家、プロデューサー